学習サポートセンター(ASC)の近況報告
北里大学一般教育部FD委員会発行
FD通信第11号(2010年12月15日発行)掲載


高校レベルの英語,数学,理科(物理学,化学,生物学)を個人指導する場所として設置されています.指導を担当するのは,高等学校を定年退職されたベテランのチューターです.ASCを訪れた学生は,高校レベルの学習内容に限らず,1年生対象の一般教育科目の内容や,自主学習の方法に関しても,マンツーマンに近いかたちで指導を受けることができます.これまでに何人もの学生がASCに通い詰め,高校時代の未習得科目を得意分野に変え,自信をもって進級して行きました.

昨年度までは,レポートの提出期限や定期試験の直前に駆け込んで来る学生が多く,こうした時期には指導を受けられなくなってしまう学生もいました.特に試験前には,ASCの閉室時間を過ぎても学生の待ち行列が残ってしまうことがありました.そこで今年度はいくつかの工夫を試みています.

まず,ASCが取り扱っている科目,開室時間,場所を記した宣伝ポスターを作成し,校舎内の数十か所に掲示しました.1年生が入学時からASCの3文字を目にする状況をつくりだすためです.

続いて,1年生を対象とする科目を担当している教員一同にお願いして,4月の講義時間内にASCの積極的利用を呼び掛けていただきました.この際,ASCが取り扱っている科目,開室時間,場所を記したスライドを教員に配布し,必要に応じて利用して頂くことで,ASCの知名度向上を目指しました.

こうした取り組みが効果を示しはじめたのか,昨年度と比較してASC利用者数が増加傾向にあります.後期に入り,一般教育部図書館3階から,L3号館1階に移転した後は,数学と物理で大幅な利用者増がみられます.9月と10月の利用者数を図に示しました.利用者増の理由としては,ASC利用を促した効果に加えて,基礎から理解しようという意欲をもった1年生が入学してきたことや,学生の学力が変化したこと,一部の科目で講義担当者が昨年度と代わり,講義内容が高度化したことなども考えられます.それぞれの要因がどの程度のウエイトを占めているのかは,現時点では不明です.

ASC運営上の最大の問題点は,開室時間帯です.現在,月曜は12:30から18:30まで,火曜から金曜は12:30から17:30までとなっています.しかし,多くの学生が3限と4限に開講されている科目を履修しているため,ASC利用ピークは5限に時間帯になります.さらに,5限(17:25終了)まで連続履修している学生も多く,月曜日の5限終了後でなければASCを利用できないという声もあります.そのため,2009年度の後半に18:30まで延長する曜日を変更する可能性を検討しました.しかし,学部・学科によって時間割が異なるため,ASC開室延長曜日変更には至らなかったという経緯があります.開室時間の設定は,今後の検討課題のひとつです.

筆者は化学の講義,要習,実験実習を担当していますが,同じ教室で席を並べて学ぶ学生どうしの,高校レベル基礎学力の開きに苦戦しています.高校での履修形態が多様化したため,学ぶ意欲の高い学生であっても,大学で自然科学を学ぶために必要不可欠な事項を全く知らないことが珍しくありません.今年度の化学講義では,指数計算や単位換算のやり方から説明する必要がありました.要習では,分数の掛け算のやり方を尋ねてきた学生もいます.こうした例が今後も増えて行くことが予想されます.講義の時間だけでは対応しきれなくなってきており,ASCとの連携によって対処して行く必要性が高まっています.1年生対象の科目を担当される先生方には,今後もASCの利用を促して頂くようお願いします.

最後に, ASCで献身的に学習サポート活動をして下さっているチューターの先生方に感謝いたします.


著書・総説・その他 < 野島 高彦